1年に1回は口腔癌検診を受けましょう。

お口の中にも癌ができるってご存知でしたか?そして口腔癌での死亡率は35.5%と胃がんの33.8%より少し上で比較的死亡率の高い癌ということになります。下記のグラフで示した通り先進国の中で口腔癌での死亡率が増加の一途をたどっている国はなんと日本なのです。

原因として考えられるのは口腔がんの認知度が低いことで検診を定期的に受ける習慣が欧米に比べて低いことにあると思います。また口腔がんが進行すると人生の楽しみである「話す」「食べる」「飲む」「味わう」などの人生の楽しみをも奪いかねない大変怖い病気なのです。

ひとくちに口腔癌と言ってもできる場所によって舌がん、歯肉がん、口腔底がん、頬粘膜がん、口蓋がん、口唇がん等があり、そのうち日本人に一番多いのが舌がんということになっています。ひとつひとつについて解説いたします。

●舌がん

口腔癌の中で約60~70%を占める一番多い癌です。好発部位側縁(の横側)で約90%がここにできます。原因は放置された大きな虫歯や不適合な歯の詰め物や被せ物、合わない入れ歯を我慢して使用している、欠けた歯など、舌に慢性的な機械的刺激が加わることでしだいに発症してきます。初期段階では潰瘍やびらんができ進行するにつれて、食事のときにしみる、痛いなどの自覚症状が現れてきます。さらに進むと、食事や発音がしにくくなる等の障害が起こるようになります。

●歯肉がん

歯肉にできる癌で好発部位は下の奥歯に近いところに発症することが多いようです。初期段階ではほぼ無症状のうちに進行することが多いです。進行すると潰瘍やしこり、腫瘍が大きくなって表面がカリフラワー状に盛り上がり、出血がみられるようになります。腫瘍が大きくなって神経まで達すると下唇の麻痺や顎を動かしにくいといった症状が出ます。

●口腔底がん

舌の下の粘膜部分にできる癌を口腔底がんといいます。原因は喫煙や飲酒が影響していると言われ女性の口腔底がんが増えています。初期段階では、小さな潰瘍や白斑、充血による紅斑が生じる場合がありますがほとんど無症状に経過するため発見が遅れるケースが多く見られます。

●頬粘膜がん

頬の粘膜にできる癌で舌癌などと同様、機械的刺激が継続的に加わったり喫煙や飲酒などが原因と考えられています。初期段階は小さな潰瘍やびらんがみられますが無症状で進行するので発見が遅れるケースが多いです。

●口蓋がん

上顎の粘膜にできる癌です。原因としては喫煙や飲酒、辛い食べ物などの刺激物が考えられています。初期段階では上顎の粘膜に赤い斑点ができるなどの症状が現れます。初期段階ではあまり痛みはありませんが、症状が進むと腫瘍ができて、大きくなると強い痛みを感じるようになります。

●口唇がん

唇と皮膚の境目あたりにできる癌で口腔癌としては発症率は低い方です。原因はやはり喫煙、飲酒、その他、紫外線などとされています。初期段階では、唇の表面が荒れる、かぶれるなどの症状があり進行すると、しこり、潰瘍、びらん、カリフラワー状の腫瘤がみられるようになります。

以上が口腔癌の種類となります。口腔癌はこれまでに述べたように初期段階では無症状に進行することがほとんどなので発見、治療介入が遅れると大変なことになります。1年に1回は口腔がん検診を受けるようにしましょう。そして今口腔内の粘膜に異変を感じたら躊躇なく診察を受けることが肝心です。

医療法人社団マハロ会理事長でアンチエイジングの専門医として東京、千葉、埼玉に大規模歯科クリニックを5医院運営、法人理念は「予防歯科を通じて国民の健康と幸福に寄与する」ことをスローガンとし「歯を健康にしてアンチエイジングを手に入れる方法「歯科革命3.0」など予防に関する書籍を執筆、現在は一般社団法人日中友好予防歯科協会理事長として中国での予防歯科の普及にも尽力している。