先生の専門は「口腔外科」だそうですが。
ずっと口腔外科畑を歩いてきたんですけど、メインとしては「インプラント」と「外傷(がいしょう)の治療」です。救急車で運ばれてきた患者さんを診る、24時間体制の足立区の病院で口腔外科の部長をやっておりました。
数えてみたら、2009年~2016の9月まで月平均6.8回当直していました。
「救命救急センターの歯医者さん版」なので歯が痛い患者さんも来るんですが、交通事故とか保育園で転んだ、歯が抜けたという患者さんの治療をしていました。
あとは親知らずの抜歯。
埋まっている親知らずだけで一年間に3~400本抜いています。
なるべく歯ぐきを切らないで、切ったとしてもなるべく小さく、骨は削らずにできる歯を小さくして患者さんの侵襲(しんしゅう:生体を傷つけること)少ない状況でやっていくことを心掛けています。
親知らずが埋まっていても大丈夫です。
大学病院に行くのと変わらない、もしくはそれ以上のこともあると、自信を持って言えます。
大学病院で非常勤講師をやっていますけど、若い子がやっているとケースもあり、なかなか出来ないときは「そこじゃないよ」と手助けをし、「ヒョッ」てやると「スッ」と抜けています。
他医院の紹介の患者さんも診てきました。
月に必ず一人か二人、歯医者さんで抜けなかったので、紹介で「やってください」ということがありました。
他医院で朝から3時間かけて抜歯をするも抜けなくて、夕方抜けなくて紹介で来た患者さんもいましたが、10分くらいで終わりました。
「こういう状況ならこうすれば抜ける、ああすれば抜ける」というコツは経験がないとわかりません。
とても初歩的な質問なんですけど、親知らずは抜いたほうがいいんですか?
最近は顎が小さい人が多くて、親知らずの入るスペースがないんですね。
なので、抜かなくちゃいけない人が多くなっています。
横向いて生える人も多いですし、上向いていても歯茎に被っちゃっている人もいます。
その場合、汚れが入った状態で放っておくと、そこの周りの骨が吸収されて炎症を起こす。
そうなると抜かないとダメですね。
抜かなくていい親知らずは
1.まっずぐ生えていて
2.きれいに見えていて
3.上の親知らずと下の親知らずがかみ合って
4.掃除もできている
だったら残していていいと思いますが、なかなかそういう人はいません。
まっすぐ生えていても手入れが行き届かないことで手前の歯が虫歯になるくらいなら、抜いたほうがいいです。
抜くなら若いうちのほうがいいですね。
「大学病院に行かないと抜けませんよ」と言われた人も、当院で全く問題なく抜けます。
今も親知らずの周りが腫れている患者さんを診たのですが、CTを撮って、画像でしっかり確認すれば患者さんも安心ですよね。
そもそも、親知らずって必要な歯なんですか?
必要ないです。
僕は、下の親知らずが生えてこなかったので、自分で上の親知らずを抜きました。
感覚でわかりますから、鏡も見ずに抜けました。
インプラントも、インプラント体を入れるのはやってもらいましたが、かぶせ物は自分で作りました。
歯型も自分で採りましたよ、なんとかできるものなんです。
歯を抜く、抜かないの判断はどのようにすればいいのですか?
歯医者さんに診てもらうのが一番ですね。
僕らが気にするのは患者さんから「抜かれた」と言われること。
残せる歯を抜くことはありません。
歯医者さんが「抜かなくてはいけない」と言った歯は、そのような状況なので、信頼してもらうしかないです、がんばって残そうとしても無理なので。
「専門医」や「指導医」のいるところで抜いてもらうといいですね。
今は持病があって血をサラサラにするお薬を飲んでいる方が多いのですが(脳梗塞・心筋梗塞・不整脈等)そういう患者さんの歯も多数抜いてきています。
「そういう薬飲んでいるから抜けないよ」って言われている人もいる思うんですが、全く問題なく抜けます。
今は「ガイドライン」がありまして、それに沿ってやっています。
薬は止めない、止めちゃいけないと書いています。
出血は絶対止めます。
救急をやっていたとき、普通の歯医者さんで「血が止まらない」言う人が来るんです。
「この状況ならあそこから出ている、ここから出ている」ということがわかります。
歯を抜いて血が止まらないということは、専門医に抜いてもらったら、まずありません。
普通の歯医者さんで「抜けない」って言われても、当院なら抜けますので、ぜひご相談ください。
どのようなキッカケで、かみむら歯科・矯正歯科クリニックに来たのですか?
「口腔外科医が必要だ!」という募集があったので、ならば私だろうと。
実は、なかなかそういう風に考える歯科医院の院長はいないんですね。
埋まっている歯の抜歯は、通常の歯科治療に比べて時間が読みづらいのです。
抜歯は、抜き出したら5分で終わる場合もあれば、3~40分かかることもあるのです。
それと、抜いたら腫れる人もいるし、「抜かれた」と思う人もいるので、普通の歯医者さんはしたがらない。
ここの院長は逆で「口腔外科の先生が必要だ、専門医が大事だ」ということで、地域医療でお手伝いできればという思いできました。
先生は、大学病院でインプラント外来をやっていましたとのことですが。
はい。
非常勤講師として先生方を指導する立場でもあります。
当院は、できるだけ抜かない、インプラントを無理やり勧めないということでやっていますので、インプラントがいいと思った症例はしますが、インプラントのために歯を抜くということはしませんので、安心してください。
大学病院だからいいのか?というと、大学では「インプラント科」というのがやっと出来だしてきたという状況ですので、大学病院だから絶対いいというわけではありません。
当院は、CTを撮って診断も出来ますので、安心できます。
インプラントは、交通事故で歯を失ったりしたらその場合はとてもいいんです。
上の奥の歯なんて無理してインプラントを入れるよりも、きちんとした入れ歯を作ったほうが快適でコスト対効果としてはいいんです。
何でもかんでもインプラントがいい、という訳ではない。症例を選んでやったほうがいいと思います。
先生は「ガマ腫」の治療において研究をなさっていると伺ったのですが。
ガマ腫とは?症例
はい。「ガマ腫」ってどういう病気かというと、舌の裏側に唾がたまるんです。
その「ガマ腫」の治療をやっていまして、山梨・千葉・神奈川・群馬など他の病院で治らなくて来た患者さんを診ています。口腔外科にかかると手術を勧められるのですが、「ガマ腫」は再発が多く、とても痛い。
私は何をするかというと「OK-432」という薬を使って治します。
一般的に口腔外科行くと「溜まるので切って出せばいいだろう」といって切って、それだけでなく、まわりに縫い付けて傷を開かせるんですね。それがまたムチャクチャ痛いんです。
僕は「OK-432」というお薬を注射して治す、というのをやっているんです。
これは山形の耳鼻科の先生でこの治療で有名な先生(深瀬先生:深瀬医院)がいるんですが「関東で診てほしい」ということになると僕のところへ紹介されてきます。一番遠いと、台湾からネットを見て来た患者さんがいます。
今月末の口腔外科学会でも、このことで話をします。
数は少ない病気ですが、悩まれている人は悩まれているんです。
なかなかこの治療方法をしている先生は少ないんです。大学病院だからできるという治療ではないんです。
コツがありますし「他の病院で治療したんだけどうまくいかなかった」といってくる方もいます。
5歳の子供でもその場でやると2回くらいで治ります。
ひとつ問題があり、歯医者でやると自費になっちゃうんですね。
厚生労働省の厚生局というところが自費か保険かということを決めているんですが、お医者さんなら5年前から保険治療で出来るのに、歯医者でやると治療はしていいんですが自費治療になるんです。当院で1万円です。
ガマ腫に関しては、手術すると悪くなる症例が多いので、困っている患者さんがいっぱいいて、インターネットで検索してくる人が多くいます。
ガマ腫の治療について詳しくはコチラのページへ>>>
先生は、医学博士でもあるということなのですが。
僕の医学博士の論文の内容というのは「静脈麻酔中の全身の変動」、例えば血圧とか心拍数とか手に汗をかくとか、そういうことを診て安全に治療するには何を見たらいいのか?という研究で学位をとっています。
口腔外科の人間は、もともと全身の管理をしてきているので、歯科治療をするときに「心臓か悪い」という患者さんでも、安全に治療できます。
大学病院にいるときは、麻酔医だと思われていたときもありました。
最後に患者さんへのメッセージをお願いします。
越谷って、なぜか口腔外科がないんです。
越谷の地域のために、専門医・指導医としてできる限りのことをやっていきたいと思います。
インタビュー2016年11月15日
Staff Interview
理事長 上村英之
Staff Interview
矯正医師 遠藤則和
Staff Interview
口腔外科担当 西原昇
Staff Interview
衛生士 鈴木麻里子